事故直後:労災に遭ったが、今後の流れがわからない

1 はじめに

「取引先へ社用車で移動中、交通事故に遭い鞭打ちと診断された」

「勤務中に荷物を運搬していたら、誤って足に落として骨折した」

「上司からパワハラを受けて、うつ病を発症した」

 令和3年における労働災害(労災)による休業4日以上の死傷者数は、14万9918人と約15万人に達しています。上に挙げた具体例のような事故に遭われた方、また遭いそうになった方は少なくないと思われます。

 また、実際にそのような事故に遭われた際、病院で診断を受けようとしたら「労災を使って下さい」と窓口で言われたり、勤務先から「労災は使えない」と言われたりした経験もあるかと思われます。

 そのような場合に、

今後はどのように手続を進めればいいか

について、ここではごく簡単にご説明します。

2 給付の流れ

 労災に遭われた場合、ケガの治療費や休業中の給料相当額の一部等については労災保険から補償を受け、保険で賄えない分については勤務先の会社に対して損害賠償請求することになります。

 労災に遭われてから会社に対して請求するまでの一連の流れは、以下のように3ステップに整理することができます。

ステップ1:労働基準監督署に対し、労災申請を行う

ステップ2:症状固定後、後遺障害の申請を行う

ステップ3:会社に対し、損害賠償請求を行う

以下、それぞれのステップについて説明します。

3 ステップ1:労働基準監督署に対し、労災申請を行う

〇事故の発生を会社に報告する

 労災の申請は、事故に遭われた従業員本人かその遺族が行うことになります。ただし、申請手続を会社が代行することは可能です。それ以外にも、治療の病院を紹介して貰えたり、申請手続をサポートして貰えたりすることがありますので、事故に遭われましたらすぐに会社に報告しましょう。会社に報告すべき内容としては、以下のものが挙げられます。

・事故に遭われた従業員の氏名

・事故の日時と場所

・事故の状況

・ケガの部位や状況

〇労働基準監督署に対して労災の申請

 何らかの事情により会社が従業員に代わって労災申請をしない、又はすることができない場合は、直接被災者が(従業員本人が)労働基準監督署(労基署)に対して労災申請を行い、事故の労災認定を受けます。労災認定が受けられないと、労災保険から保険給付を受けることができません。

4 ステップ2:症状固定後、後遺障害の申請を行う

〇病院での治療

 労災によってケガを負った場合は、病院で治療を継続することになります。ただし、治療を受ける病院が労災保険指定の病院であるか、指定を受けていない病院であるかによって、治療費の給付方法が異なります。

 労災病院指定病院の場合は、病院に対して療養の給付請求書を提出することによって、窓口で負担する治療費はかかりません。これに対し指定を受けていない病院の場合は、一旦治療費を全額立替えた上で、療養の費用請求書を労基署に提出して治療費を返してもらいます。

〇症状固定後の後遺障害申請

 労災保険では、たとえ症状が労災以前の状態まで回復しなかったとしても、

・傷病の症状が安定している状態

・医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できない状態

これを、症状固定といいます。症状固定と判断されると、治療費(療養給付)や休業補償(休業給付)が打ち切られますので、認定を受けた場合、障害給付から補償を受けることになります。

 障害(補償)給付を受けるためには、担当医師から診断書を頂いた上で、支給請求書を労基署長に提出し、審査を受ける必要があります。

5 ステップ3:会社に対し、損害賠償請求を行う

 労災保険は、労災によって生じた全ての損害を補償しません。例えば、事故が発生したことによる慰謝料については労災保険で支給されません。労災保険によって補償されない損害は、会社に対して賠償請求していくことになります。

6 おわりに

 ここまで事故発生後から会社に対する請求までの一連の流れをご説明しましたが、実際にご自分で必要書類を揃えて病院や労基署に提出することはかなりの労力と思われます。必要に応じて最寄りの労基署の窓口や弁護士に相談することをお勧めします。

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