自分には何の非もないのに、相手方から車をぶつけられる「もらい事故」に遭うケースは少なくありません。
相手方が自動車保険に加入していれば損害賠償金は補償されますが、保険会社の言うことを鵜呑みにすると正当な補償を受けられないおそれがあるので注意が必要です。
今回は、もらい事故に遭った場合の注意点と対処法をご説明します。
1 もらい事故とは
もらい事故とは、被害者側にまったく過失がない交通事故のことです。過失割合10対0の事故のことを、俗にもらい事故と呼んでいます。
もらい事故に該当する典型例として、次のようなケースが挙げられます。
・信号待ちで停車中に追突された
・センターラインをはみ出してきた対向車に正面衝突された
・青信号で横断歩道を歩行中に、赤信号を無視して突っ込んできた車に衝突された
加害者の全面的な過失によって起こった事故なので、被害者としては十分な補償を求めることが大切です。
2 もらい事故で請求できる損害賠償金
もらい事故の場合も、請求できる損害賠償金の費目は一般的な事故の場合と同じです。具体的な費目は以下のとおりです。該当するものは漏れなく請求しましょう。
【人身事故の場合】
・治療関係費
・通院交通費
・休業損害(休業して収入が減った場合)
・慰謝料(後遺障害が残った場合も含む)
・逸失利益(後遺障害が残った場合、または死亡事故の場合)
【物損事故の場合】
・車の修理代または時価評価額(どちらか低い方)
・評価損(修理しても欠陥が残る場合や、事故歴により市場価格が下がる場合)
・レッカー代
・代車費用
・休車損害(営業用車両の場合)
もらい事故では、被害者に過失がないため過失相殺は行われません。被害者は、損害賠償金を全額請求できます。
3 もらい事故の被害者が注意すべきポイント
もらい事故の被害に遭ったときは、次の2点に注意が必要です。
(1)示談代行サービスは使えない
もらい事故では、被害者が自動車保険に加入していても、示談代行サービスは使えません。
なぜなら、被害者に過失がなければ、被害者側の保険会社に賠償金の支払い義務はないからです。このような場合に保険会社が被害者に代わって示談交渉をすることは、弁護士法第72条で禁止されているのです。
そのため、被害者は自分で相手方保険会社と交渉しなければなりません。場合によっては、自分で証拠を集めて、無過失であることを証明しなければならないこともあります。
(2)相手方保険会社の示談案は適正ではない
過失割合に争いがないとしても、相手方保険会社が提示する示談案は適正な金額とはいえないことに注意が必要です。
なぜなら、保険会社は慰謝料を任意保険の基準で計算するからです。適正な慰謝料を受け取るためには裁判の基準で計算する必要があります。任意保険の基準では、保険会社の利益を確保する必要性があるため、慰謝料額は裁判の基準より大幅に低く設定されています。
そのため、保険会社の言うことを鵜呑みにすると、不当に低額の慰謝料で示談してしまうことになりかねません。
4 もらい事故に遭った場合の対処法
もらい事故に遭ったときの対処法は、示談代行サービスを使えない点を除いて、基本的に一般的な事故の場合と同じです。
まずは警察に連絡することが必要です。怪我をした場合は、人身事故として届け出ましょう。
現場での事情聴取などの処理が終わったら、病院で診察を受けるべきです。事故直後には痛みを感じなくても、後日に症状が出てくることもあるので、念のためにでも受診しておきましょう。
その後は医師の指示に従って、治るまで治療を続けましょう。完治しない場合には、後遺障害等級の認定を申請します。
並行して、車の修理代の見積もりをとるなどして、物損に関する損害額も計算していきます。
損害額が確定したら、相手方保険会社との示談交渉により、示談金の額を決めます。
ただ、保険会社の担当者は示談に関する専門的な知識や経験が豊富なので、被害者の方がご自身で対等に交渉することは難しいのが実情です。
そのため、示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は被害者に代わって相手方保険会社と交渉します。慰謝料も裁判の基準で計算した金額を請求するので、適正な金額での示談が期待できます。
弁護士費用特約を使えば、弁護士費用は被害者側の保険会社が支払ってくれます。弁護士費用特約に加入している場合は、積極的に利用するとよいでしょう。
5 まずは弁護士に相談を
弁護士費用特約がなくても、弁護士に依頼すれば慰謝料の増額などにより、十分なメリットが得られるケースが多々あります。
弊所では、交通事故に関するご相談には無料で対応しており、どのようなケースでも最善の解決策をアドバイスいたします。もらい事故に遭ってお困りの方は、お気軽にご相談ください。