給与所得者の休業損害について

給与所得者の場合で、前年度の源泉徴収票がない場合の基礎収入

(1)原則

 基礎収入とは、「事故前の現実の給与額を基礎として、受傷による欠勤のために喪失した給与額とする」取扱いが一般的であります。実際には、休業損害証明書を参照します。
 
具体的には、事故前3か月間に被害者が受給した給与合計額(本給+付加給。ここから所得税や社会保険料は控除しません。)を3か月の日数(休日・祝祭日を含む)で割って算出します。
 
 なお、源泉徴収票や所得証明書(課税証明書)も併せ参照することがあります。
 

(2)収入を証明する資料がない場合

 被害者が実際に給与を受け取っていても、会社から休業損害証明書が発行されない場合や最初から所得の申告をしていないため納税証明書上の所得がゼロになっているなど収入が明らかでない場合には、賃金センサスの平均賃金を参考にして収入を認定することがあります。

主婦の休業損害として請求することができる場合

男女の性別や年齢を問うことなく、現に家事労働に従事していればよいです。
 
家事従事者が、同時に会社に勤務して別途収入を得ている場合(兼業主婦)であっても、その金額は加算しません。これは、兼業主婦が家庭外で仕事をすればその分だけ本来の家事労働を行えなくなるため、結局、家事労働の評価と家庭外での収入とを合計したものが、専業主婦の家事労働の評価と等しくなるという考え方から来ています。

なお、兼業主婦が平均賃金を上回る収入を得ている場合には、高い方の現実の収入額を基準とすることが多いです。

休業日数について

(1)給与所得者の場合

●入院して給与が支給されなかった期間は、原則として全期間が休業期間といえます。
 
●通院して給与が支給されなかったか、又は減額された場合は、症状固定日までの期間で休業損害を算定することになります(休業日数については、休業損害証明書を参照します。)。
 
●なお、有給休暇の場合は、有給休暇を使用した日数が休業日数として認められます。
 

(2)事業所得者の場合

●入院した期間は、原則として全期間を休業期間と見てよいと思われます。
 
●通院した期間は、症状固定日までの範囲内で、傷病の内容・程度、業種、通院期間の長短など諸般の事情を考慮して妥当な範囲で休業期間を算定すべきであります。
 

(3)家事従事者の場合

●入院した期間は、原則として全期間を休業期間と見てよいと思われます。
 
●通院した期間は、自宅にいる時間は多かれ少なかれ家事に従事できる可能性があります。この場合、被害者本人の傷病の部位・程度、回復の度合い、年齢、生活状況や家族の状況(家事を肩代わりしてくれる同居家族がいるか)などを考慮して、妥当な休業日数を算定すべきであります。
 
 特に、休業期間が長期にわたる場合は、上記の各事情を考慮して、一定期間にわたり一定割合に制限したりして段階的に減らすなど、妥当な休業日数を算定すべきであります。
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