私どもは交通事故を専門として弁護活動をしておりますが、私は日々整骨院の先生方との連携の必要性、メリットを痛感しております。
これまでの交通事故分野における弁護士業務
これまでは弁護士の業務は交通事故発生~治療(整形外科/整骨院)~症状固定とこの段階になって初めて弁護士の出番となりました。
すなわち、弁護士=法律業務=賠償額が確定できる時期=症状固定時期からしか事件処理かかれないという偏見が蔓延していました。実際、旧来型弁護士のスタイルの先生方は症状固定前に来ても、症状固定してから来てくださいと断っていました。
これからの交通事故分野における弁護士業務
(1)後遺障害等級認定に関する問題点
しかしこのような旧来型のスタイルでは交通事故被害者救済はできません。
確かに、賠償額が確定するのは症状固定段階以後ではありますが、この段階においては既に治療は終了しており、いざ後遺障害獲得のためにMRIを撮影したり、神経心理学検査を行おうとしても時すでにおそしです。
すなわち、たとえばむち打ち症状で頚部痛にくわえて、上肢から指先へ掛けて痺れがあり明らかに神経根症の症状を有しながらもMRI撮影がなされていない(レントゲン撮影されていても神経根の障害は映りません)ことや整形外科通院頻度が少なすぎる。必要な神経心理学検査がなされていないため症状を医学的に客観化できていない等のために本来であれば後遺障害14級9号ないし12級13号の後遺障害等級が得られるべきが得られないという例はこれまで幾度も見てきました。
そして、その度に事故当初から来てくれたら必要な検査の指示、通院の指示をして後遺障害等級がとれたのにと忸怩たる想いを何度も味わってきました。
(2)保険会社の治療費打ち切りに関する問題点
また、旧来型弁護士のスタイルだと、被害者は例えばむち打ちについて頸部後方の痺れだるさが残存しているのに、保険会社から治療の打ち切りを告知され、本来であれば整形外科や整骨院にて十分に治療・施術、具体的には整形外科でのリハビリ、整骨院での手技療法により身体の回復をすることが可能なのに、弁護士が介入していないために保険会社から容易に打ち切りを宣告され、身体の回復の契機を何の抵抗もなく奪われてしまうことが頻出しておりました。
(3)これまでのスキームのジレンマ
しかし、このような旧来型弁護士のスタイルだと症状固定まで被害者は誰も頼ることができずに終始保険会社主導で進められ、必要な神経心理学検査や受けるべき治療施術も十分に受けられないまま治療・施術を打ち切られ、その結果、被害者は本来得られるはずの後遺障害等級も得られない、治療も不十分なまま痛い体を推して示談額を提示され、よくわからないまま示談書に押印させられてわずかな示談金を取得するだけでいわば泣き寝入りしていました。例えば主婦の方が6ヶ月通院したとして通院慰謝料は裁判基準で約90万円です。これに主婦の休業損害6ヶ月約170万円を加えて合計260万円が精一杯でしょう。
しかし、むち打ちの神経症状としてこれに後遺障害14級が認定されれば、後遺障害慰謝料110万円と逸失利益約70万円が加算されます。合計180万円ももらえた可能性があるのです。
さらに、上記障害が事故当初から適切な撮影方法を用いてMRI画像を撮影して、その結果神経根症が画像上明らかになり、後遺障害12級13号が認定された場合はどうでしょう。
この場合には、後遺障害慰謝料290万円、後遺障害逸失利益約380万円合計すると670万円もの賠償金を取り逃していた可能性があるのです。
ここまで具体的に書けば保険会社の言うことを今まで信用して示談してきた被害者がどれだけ泣き寝入りを余儀なくされてきたかが分かるでしょう。
むち打ちになる典型事故態様のいわゆるおかま(追突)事故など被害者は無責過失なしの事故がほとんどです。いいかえれば自分は全く悪くないのに体に障害を負わされ、後遺障害のことなどよくわからないまま、むろん後遺障害等級を獲得するのに必要な神経心理学検査のことなど全く分からないまま治療を打ち切られ、後遺障害分の賠償提示もない示談書にいわれるがまま、大会社のいうことだから間違いないだろうという誤解を胸に抱いて押印して、その後数年にわたり交通事故のために通院しているというのが実態なのです。
解決策(損害賠償スキームの転換)
(1)これまでの悪循環
このような旧来型弁護士のスタイルではいつまでたっても交通事故被害者の救済は出来ません。事故直後に弁護士とコンタクトを採らなければ保険会社主導の下打ち切り→後遺障害に必要な検査なし→本来得られる後遺障害等級とれず→少額の示談を分からないまましてしまうという悪循環は断ち切れません。
(2)ファーストコンタクトは整骨院の先生です
考えるに交通事故被害者が交通事故に遭ってまず後遺症などの事について相談できる相手は誰でしょうか?
被害者は賠償云々よりまずは体が痛い治して欲しいという切実な願いをもっております。そして、実際に痛みを和らげる手技療法を行っているのは整骨院の先生方なのです。
交通事故被害者は無論整形外科に通院されますがほぼ全員の方が整骨院に並行して通院されております。このことから分かるように被害者からすると今ここにある痛みを取ってくれるのは整骨院の先生だとほとんどの被害者が感じておられるのです。そうです。交通事故被害者にとって整骨院の先生は本当に頼れる存在なのです。
(3)賠償スキームの転換
そして、私は、整骨院の先生と弁護士が連携することが被害者救済にとって最大のメリットが発揮できるし、むしろ被害者救済に連携は不可欠ではないかと考えております。
私は、交通事故被害者救済のために整骨院の先生方と連携をとって、従来の賠償スキームから発想の転換が必要だと考えます。
すなわち、交通事故被害者はしかるべく後遺障害等級がとれるように、十分な治療施術が受けられるように損害賠償請求スキーム自体を従来型から転換する必要が有るのです。
(4)後遺障害等級認定に関する解決策
すなわち、交通事故被害者が事故後整骨院に通院開始した段階でまず整骨院の先生もしくは患者様から弁護士に連絡を頂き、弊事務所では弁護士が被害者の同意の下医療記録や画像を精査して後遺障害の見立てを立てます。事故態様、障害の程度から将来の症状固定時期において得られるべく妥当な後遺障害の目標を立てるのです。
そして、妥当な後遺障害等級に向かってなすべき検査や医証を残す指示をします。例えばむち打ちであればMRI撮影は3~3.5テスラ(解像度)脂肪抑制で1mmから2mmスライスという指示の下撮影してもらわないと被害者が高齢で年齢変性によるヘルニアか外傷性によるヘルニアかは区別が出来ません。また、近年等級認定機構による等級認定が非常に厳しくなっている現状があり、むち打ちでMRI画像によりヘルニアが描出されている場合3,4年前であれば12級13号少なくとも14級9号が認定されていたのが非該当結果となることがまれではありません。そのためむち打ち被害者でも画像だけではなく深部腱反射、神経根誘発テスト、筋萎縮検査など各後遺障害等級に応じた検査結果を付けて後遺障害申請をしなくては妥当な後遺障害を得ることが難しくなっております。弊事務所ではこれらの画像や検査を指示助言して、場合によっては弁護士が病院同行をして必要な検査結果を得た上で弊事務所から直接被害者請求をすることで保険会社を介在させることなく等級認定機構により妥当な後遺障害等級を得ることが出来ています。
(5)症状固定後の通院もお勧めします。
また、弊事務所では被害者の方に症状固定までは整形外科・整骨院に通院スケジュールを提示して通院していただき、症状固定後もこれまでと同じ整骨院に通院することを進めており、ほとんどの被害者が固定後も通院を継続されております。
なぜなら、症状固定した後も神経症状などはすっきり回復することはありません。被害者の現実の痛みを緩和しなければ仕事や家事にも支障があるわけで損害賠償金を獲得することと同様に、体の痛みを緩和することが大事だと考えているからです。
また、固定後の通院は妥当な等級判断が等級認定機構からでなかったときにも必要です。つまり、弊事務所では目標としていた後遺障害等級が獲得できなかったときに異議申立により目標等級を獲得することは屡々あるのですが、固定後の通院は固定時の症状の裏付けとなり、それ自体異議申立の重要な資料となりうるのです。もともと異議申立が認められるのは20%ほどです。その高いハードルを乗り越えるためにも固定後の通院が必要なのです。
(6)保険会社の治療費打ち切りに関する解決策
さらに、整骨院の先生方と弁護士との連携は保険会社の治療費打ち切り対策としても有効です。交通事故被害者が全員寝たきりになるわけではありません。その6,7割はむち打ちに代表される神経症状です。被害者にはこれまで継続してきた生活があります。家族がいる方も多数いらっしゃいます。故に被害者は通院時間を削って体の痛みを我慢して仕事に傾注します。
皮肉なことに、保険会社はこの事態を逆手にとって打ち切り宣告をすることが屡々見受けられます。通院期間が1ヶ月空いた。これまで通り仕事ができている。これを「通院もせずに仕事がこれまでと同じように出来ているのだから今後通院の必要はないですね」と逆手にとられるのです。「違います 生活がかかってるので仕事をしないわけにはいかないのです」「仕事を休んでいると会社から辞めさせられるのです」私が声を荒げたことは何度もあります。
事実は事実です通院していない事実、継続して勤務している事実については払拭することは出来ませんがこれら事実を基に戦うことは困難です。
ここでも発想の転換が必要であり、それには整骨院の先生方の協力が不可欠です。
発想を変えて保険会社が通院継続を認めざるを得ない通院頻度にすればよいのです。
この場面においても事故直後に被害者と接点がある整骨院の先生方がキーパーソンになります。どうぞ交通事故被害者の方が整骨院に来られたら先生方若しくは患者様から弊事務所にご連絡ください。弊事務所では被害者の方にできれば月に8回、少なくとも月に4回は通院するように通院カレンダーの指示をします。この通院頻度を維持してもらえば治療費打ち切りを宣告されることはまれです。事故が軽微、軽い障害の場合医師の判断により症状固定になることはありますがそれ自体は体が治癒しているのだから被害者にとっても良いことであり、軽微な場合は通院より賠償交渉をすべきです。
整骨院の通院だけは認めないという保険会社もよくあります。このような場合整形外科の同意書をもらうのが王道ですが、同意書自体書いてくれないことがままあります。弊事務所では連携する病院で診察を受けてもらい医師による手技施術が必要との意見書を書いてもらうことも度々あります。
あくまで被害者が望むのは賠償金ではなく元の体にして欲しいという切なる願いであることはこれまで10年被害者に寄り添ってきた私どもはよく分かっております。
そのために、私どもは整骨院の先生方に一人でも多くの被害者の痛みを和らげていただきたいと心から祈念しているのです。
交通事故被害者のために共に立ち上がりましょう!
(1)弊事務所は一部上場企業だけを相手にするような法律事務所ではなくいわゆる町弁として地域の方々の憂いを取り除くことを使命としております。
整骨院の先生方も交通事故被害者の方に限らず地域の方から「あそこに行けば治ったで」「後遺症もとれたで」「治療費も保険会社からでたわ」と言って安心して頼れる存在になっていただきたいと思います。
そのためには交通事故被害者救済に向けて弁護士と整骨院の先生が一体となって取り組む必要があります。連携して取り組むことで乗り越えられるハードルがいくつもあるのです。
どうぞ交通事故被害者の方を目の前にされたときには弊事務所に御連絡ください。目の前にいる被害者の救済、貴院の繁栄のために心から助力させていただきたく存じます。
(2)弊事務所では整骨院の先生方と定期的に勉強会を開催しており、日々被害者救済の輪を拡大しております。
勉強会では施術証明書の記載方法をお伝えしたり、交通事故の問題に留まらず患者様の心理的ケアをどうするかという話題もでます。
このような連携を通じて整骨院の先生方は患者様の痛みばかりでなく不安を取り除くことまで配慮されていることが分かって、逆に勇気をもらっています。
連携すれば出来ることはもっとあるはずです。地域の方の役に立つことはもっと出来るはずです。この輪を少しずつでも大きくすることを願って止みません。
一緒に頑張りましょう。