弁護士法人i
今回は,交通事故の示談・裁判で頻繁に使われる「症状固定」という言葉についてご説明致します。
1. 「症状固定」が使われる場面
交通事故後の損害賠償では,以下のような場面で,「症状固定」という言葉が登場します。
① 治療費・通院慰謝料が認められる終期
⇒症状固定後は,治療費・通院慰謝料は原則として認められません
② 休業損害が認められる最終時期
⇒休業損害が認められるのは,長くても症状固定日までです。
③ 入通院慰謝料の算定の対象となる治療期間の終期
⇒事故日〜症状固定日の日数に応じて,慰謝料の額が決まります
④ 後遺障害の基準時
⇒症状固定日に一定の症状が残っていれば,後遺障害となります
⑤ 逸失利益の算定基準時
⇒逸失利益を算定する場合,症状固定日以降の期間を対象とします。
2. 症状固定の意味
専門書では,以下の2つを満たしたとき,と説明されています(赤い本平成25年版下巻 8頁)。
一通りの治療がされたこと
これ以上よくならないこと
事故後にお医者様で治療を受けてきたけれども,これ以上よくならない状態が,症状固定なのです。
そして,①〜⑤のとおり,症状固定時が決まることで,賠償額を算定することが可能になりますので,症状固定は,示談のスタートとも言うべき,重要なタイミングです。
3. 症状固定は誰が決めるの?
症状固定時を最終的に決めるのは,裁判所の裁判官ですが,原則として主治医の方の判断が尊重されます。
ただ,ケースによっては,主治医の方の判断とは異なる時期が症状固定時とされる場合もあるので注意が必要です。
症状の内容,症状の推移,治療の内容,治療経過,検査結果,同様の症例の治療期間,交通事故の状況などを踏まえて,裁判官が,医師の判断よりも早い時期,または遅い時期を症状固定とすることもあるのです。
このように,症状固定については,医学的な判断をもとに,裁判官による法的な判断によって決まります。
そのため,保険会社から「治療打切りです」など,症状固定に関する打診が来た場合には,医学的な判断はもちろん,法的な判断としてその打診が正しいのかを確かめる必要があります。
治療打切りがなされてしまうと,事故に応じた適切な示談ができないばかりか,本来であれば必要であった治療を受けられないという事態が発生してしまいます。
弊所では,示談交渉だけでなく,早期のアドバイスによってこのような事態を避けるべく,症状固定前の治療中の被害者の方からの相談にも,無料で対応いたしております。
お気軽に御相談下さい。