後遺障害について

1 後遺障害とは

後遺障害とは,交通事故によるけがの治療を行って症状が固定した後,医師がこれ以上の改善が見込めないと判断し,かつ身体に障害が残った状態といいます。

交通事故によるけがが一定の期間を経て,治療を続けてもそれ以上の改善は見込めない状態になることがあります。医師は,このような状態になると,「○年○月○日をもって「治癒」または「症状固定」」と記入します。この段階で,被害者の身体に一定の障害が残存している場合には,この障害を当該事故による後遺障害として判定するか否かによって,被害者の請求できる損害賠償の範囲が変わってくるのです。

 

2 後遺障害等級認定の申請

後遺障害にあたると考えられる場合には,主治医に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」に,所定事項を記載してもらい,後遺障害の等級認定を申請することになります。

後遺障害の等級を認定し,損害額を調査して自賠責保険金の金額を決定するのは,自賠責保険会社です。しかし,等級認定の基準が自賠責保険会社によってまちまちになると不公平になるので,自賠責保険会社は,後遺障害等級認定の申請があった場合,損害保険料算出機構の調査事務所への等級の認定を依頼することになります。この調査会社の等級認定及び損害の調査は,法律上,自賠責保険会社を拘束するものではありませんが,実務的には,自賠責保険会社が,調査事務所の認定と異なる等級を認めたり,異なる損害を認定したりすることはありません。

被害者が後遺障害等級認定申請を行うに当あたっては,一括払いと非一括払いといった場合に分かれます。

被害者がまず自賠責保険会社に対して被害者請求(自賠法16条請求)を行う場合を,非一括請求(非一括払い)といい,任意保険会社からまとめて支払いを受ける場合を一括請求ないし一括払いといます。被害者は,被害者請求する場合には,後遺障害診断書などの必要書類を添付し,後遺障害等級の認定を申請するとともに,その等級に応じた損害賠償額の支払いを受けることになります。

これに対して,一括払いの場合,被害者は後遺障害による自賠責保険金も任意保険会社から支払を受けることになります。任意保険会社は自賠責保険金も含めて被害者に支払った後に,自賠責保険会社に対して保険金を請求することになりますが(自賠法15条請求),任意保険会社としては,自賠責保険会社に対していくら求償できるか把握しておく必要があります。そこで,一括払いをする前に,自賠責保険会社に対し,後遺障害等級の認定をすることを求めるわけです(事前認定)。

 

3 異議申立て

被害者請求における後遺障害等級に不服がある場合(非一括請求),または,事前認定における後遺障害等級認定に不服がある場合(一括請求),被害者は,異議申立てをすることができます。

非一括請求の場合は,被害者が自賠責保険会社に対して異議申立書を提出することになります。

一括請求の場合は,被害者が任意保険会社に対して異議申立書を提出し,任意保険会社が自賠責保険会社に対して再認定の依頼をすることになります。

異議申立てをする際には,新たな医学的な証拠が必要となってきます。

 

4 まとめ

上記のように,後遺障害等級認定の申請時,また,認定された等級に対する異議申立て時のいずれの時点においても,適切な判断が必要となってきます。異議申立ての際には新たな医学的な証拠が必要であり,その収集についても,多分に知識・経験が必要となります。その際には,交通事故について専門的知識・経験のある弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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