裁判例で見られる労災

ここでは、裁判で労災として認められた事例をご紹介します。

① 製造業を営む会社の従業員が機械に手を巻き込まれて負傷した事例

製麺業を営む会社の従業員が製麺業務に従事中に製麺機に左手を巻き込まれる事故で指の骨折等の傷害を負ったことについて、当該製麺機は常時刃が露出しているという危険性を有するもので、製麺業務は露出して上下する刃の真下に手を伸ばすという高い危険性を有するものであったことからすると、刃に覆いを付けるなどの物的対策やそれに代えて十分な教育を行うなどして危険性を防止する義務を負っていたのにこれを怠った安全配慮義務違反があると認められた事例

② エステティックの従業員が頚肩腕傷害を負った事例

エステティックサロンで働くエステティシャンに発症した頚肩腕傷害について、上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること、発症前に過重な業務に就労したこと、過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められることから、上記傷害は業務に起因するものであると認められた事例

③ 植物管理工事会社の従業員が樹木の剪定中に転落して後遺障害を負った事例

植物管理工事会社の従業員が樹木の剪定中に転落して受傷し重篤な後遺障害を負った事故について、安全帯の着用の徹底が求められるべきであったのに、その使用の徹底を指示していなかったことから、会社に安全配慮義務違反があったと認められた事例

④ 新人研修中に負傷した事例

被用者が新人研修に際して、24キロメートルを5時間で完歩する訓練中に転倒して負傷し、右足関節機能障害の後遺障害を残したことについて、上記訓練は個人差や運動経験に全く配慮していない点で無理があるプログラムであること、歩行訓練中に負傷した被用者が訓練の中断や病院受診を求めても拒絶したことなどから、会社に安全配慮義務違反があったと認められた事例

⑤ 製造業を営む会社の従業員が長時間労働によりうつ病を発症した事例

換気排煙窓の開閉装置の設計・製造等を業とする会社の施工管理部で勤務していた労働者が、過重な長時間労働に従事させられたことでうつ病を発症するに至ったことについて、会社が当該労働者の業務量を軽減するための適切な措置を講じるべき義務を負っていたのにそのような措置を講じることなく長時間労働に従事させ続けたことから、安全配慮義務違反があったと認められた事例

⑥ 病院の職員が上司のパワハラにより適応症を発症した事例

病院に勤務していた職員が上司からパワハラを受け適応障害を発症したことについて、業務の適正な範囲を超えて叱責を繰り返した行為はパワーハラスメントに当たること、病院は職員の心理的負荷等を軽減するための措置を採らなかったことから、病院に安全配慮義務違反があったと認められた事例

⑦ 学校の教員が先輩教員の叱責によりうつ病を発症し自殺した事例

学校の教員が先輩教員から度重なる注意を受けたことによりうつ状態になり自殺したことについて、校長には先輩教員にこれ以上の注意をしないよう自制を促すとともに、業務において先輩教員と接触する機会を減らす措置を講じる義務を負っていたのにそれを怠ったことから、校長に安全配慮義務違反があったと認められた事例

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